相も変わらず暗い話がお好きだと思う。
湊かなえ原作の映画「少女」を観た。
覚書をば。
劇場予告で観たいと思ったものの劇場公開を見逃し、そのまますっかり忘れていたのだが、先日レンタルショップで目に入ったのだ。
観たいと思った理由として、美少女2人の犯行が観たかった。美しい殺人犯の美しい犯罪や少女らしい動機を、まるで写実的絵画のように観せてもらえるとの期待からだった。
そして大人が思う「少女」と少女が思う「少女」との間にある隔たりについて、一考させてもらえるのではなかろうかと。
結論から言えば、そういった話ではなかった。
予告で騙されたひとは少なくないだろうと思う。小説でもたびたび、最高の装丁に最低の中身というのはままある。むしろ中身がこれだから外見で売ったんじゃないのかと思うことさえあるくらいだ。これは詐欺だと思うのだが、読む・観るきっかけだと言われれば黙るしかない。
今回は、詐欺だというほど中身に落胆はしなかった。
湊かなえの小説は読んだことがなく、彼女についての知識はゼロだ。触れたといえば、「告白」を観たくらい。
告白のときほど顕著ではないにしろ、登場人物のそれぞれを描くのが好きなのだろうか。今回も、あのひとこのひとと描いている。
メインはもちろん少女2人だが、少しずつ人生の端が重なる人物についても描かれている。
この映画のストーリーにはこれといって驚きもなく、推理も不要だった。犯人は誰とか、どうやってとか、予告で期待したものは皆無だったのだから。
落胆しなかったひとつの要因として、映像が美しかったことがあげられる。役者は少女ではないにしろ、美しく撮られていて飽きずに観ることができた。
山本美月の細い髪が、風や水に揺蕩う様は本当に綺麗だった。
劇場に置かれていたフライヤーもよかったし、デザインはとてもよい映画のように感じる。
本田翼の演技はドラマを見る限り好かず、大げさで苦手だったのだが、今回に限っては病室で思いがけず笑うところ以外はすんなり観ていられた。合う役だったのだと思う。
緩やかに話が進んでいくのが、映像美とちょうどよかった。
登場人物たちの関係性が明らかになっていく様は、パズルのピースのようにとまではいかない。パズルのピースは「あ!」という発見と驚きが伴うが、この作品についてはそうではない。
並び替え、整理していくような印象。
出来過ぎな部分が多々あり、そのご都合主義は仕方がないにしても、彼女たちの夏休みの行動のきっかけについて省略されているように感じる。
解説を読んではじめてアツコが死を見るために老人ホームに行ったと知ったのだが、ユキが行動を起こすのはまだわかるにしても、アツコがなぜ死を見たいと思ったのかは明確でない。原作に書かれているのかもしれないが、ここは省かないでほしかったところ。
ただ、嫌悪感も陰湿な感じも引きずることなくラストは清々しい終わり方。救いがあってよかったと思う。ヒューマンドラマという感じ。
深読みのし過ぎかもしれないが、「了」を書ききるのを見せずに暗転したところが「ヨルの綱渡りは終わっ」てないのかもしれないと思ってしまった。次のターゲットに移るだけという厭世的なメッセージなのかな、と。